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グラボの価格推移と物価指数と原油高と仮想通貨価格を比較して妥当な価格ラインを考察してみた

長らく続いたグラボの価格高騰がだいぶ落ち着いたように見えますが、実際今の価格は妥当と言えるラインまで落ちているのでしょうか。

グラフィックボードの価格推移と日銀が発表している物価指数を比較して、2022上半期現在の価格の妥当性を考察してみます。

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輸入物価指数

物価指数の代表的な例では政府が発表する「消費者物価指数」と日銀が発表する「企業物価指数」があり、「輸入物価指数」は企業物価指数内の指標として同じく発表されています。

グラフィックボードは基本的にすべて海外から輸入される製品(もしくは部品を含む)なので、今回は「輸入物価指数」を取り上げてみました。

下のグラフは2022年5月に発表された輸入物価指数から抜粋しており、2015年を基準(100)とした場合の円ベースの輸入品目の物価指数の推移を表しています。
(円ベースでの指標であるため為替の変動も加味されます。)

ピックアップしたのは
『電気・電子機器』
『電子計算機・同付属装置』
『パーソナルコンピュータ(デスクトップ型)』
『表示装置』
の4項目で、どれもPC関連の輸入物価に関わる指標です。

日本銀行 時系列統計データ検索サイト

グラフを見ると、PC関連の輸入物価の明らかな価格上昇は2021年Q1を境に始まっています。
グラフ左の数値(2015年を100とした時の割合)から、2020年Q4→2022年Q1でそれぞれの品目における物価上昇割合が読み取れます。

  • 電気・電子機器 約+22%
  • 電子計算機・同付属装置 約+20%
  • パーソナルコンピュータ(デスクトップ型) 約+17%
  • 表示装置 約+36%

仮想通貨の価格推移

2021年Q1の主なニュースとしては仮想通貨の高騰が挙げられます。
グラフィックボードは仮想通貨マイニングにも秀でた性能を持つため、マイニング需要に連動して取引価格が変動してしまうことも今や有名な話です。

Bitcoin 週足チャート

Binance Bitcoinチャート

パンデミックの影響

2020年に端を発した世界的なパンデミックも輸入製品の価格に大きな影響を及ぼしています。

その一つが半導体不足
世界的な需要増とパンデミックによる生産力減少により、半導体不足の問題が顕在化してきたのが同じく2021年1月ころからだったと記憶しています。

また、原油価格の高騰も影響を与えている要因のひとつです。

2022年5月発表 2015年基準 円ベース 石油・石炭・天然ガス

パンデミックにより需要が下がった原油に対して産油国が生産調整を行うことで世界的な原油不足となり、価格が高騰しているという状況。
これによりエネルギー全体の価格が上昇し、物流、生産、発電などおおよそ全ての経済活動においてコスト増の影響が出ています。

RTX3070価格推移

次にグラフィックボードの価格推移として、RTX3000シリーズからRTX3070をピックアップしてグラフにしました。
『MSI VENTUS 2X OC』を例にしているのは個人的に使用し愛着のあるモデルだからで、他意はありません。

なお同モデルだけでは販売期間が不十分であるため、同モデルのLHR版のグラフも併せて掲載しています。
マイニング性能としては差がある2モデルですが、ゲーマー目線で見た場合の描画性能としては全く同一のもので、ちょっと乱暴ですがここではおおよそ同じ価値のものとして扱います。

RTX3070はRTX3000シリーズの登場と同時に発売されたモデルで、当初の価格はおおよそ¥70,000前後。
2021年2月~4月は在庫不足から販売価格が不明となっていますが、2021年5月には20万円弱の最高値を記録しています。

LHR版は2021年6月に販売を開始し、当初の価格は10万円強。
その後若干の値上がりは合ったものの、2022年現在では10万円を切るラインまで値を下げています。

グラフィックボードの価格をチェックする(ドスパラ)

比較と推測

まずすべてのグラフの時間軸をアバウトにそろえたものがこちら。

グラフィックボードの価格高騰が仮想通貨の高騰に牽引されて引き起こされたことは明らかですが、その後は落ち着きを見せています。
LHR版に関してはマイニング需要の影響を受けにくいという理由もありますが、これはおそらく、2021年後半に中国でマイニング規制が行われたことや、パンデミックによる原油高で電力コストが増加したことによりマイニング需要が落ちてきていることも理由のひとつだと推測できます。

また2022年以降に関してはウクライナ侵攻による社会情勢不安から、大口の投資先がリスク資産である仮想通貨から安全資産であるドルや金に移動し、これによりグラボ需要もさらに低下していると考えることもできます。

実際、『RTX3070 VENTUS 2X OC(LHR)』の価格は約7万円→10万円弱に推移。
この間、PCに関連するであろう輸入物価指数は概ね20%前後値上がりしていることから、単純計算で約7万円のものが8万~9万円程度に値上がりしていてもなんら不思議ではありません。
(ただし企業物価指数及び輸入物価指数は消費者物価指数とは違い、企業間でやり取りされる仲買い価格に相当するものであり、消費者が手にする時点の物価とは異なります。)

今後もさらにグラボ価格は下がるのか?

では、現在10万円前後の価格に落ち着いたRTX3070が、発売当初の約7万円のラインまで値を下げることはあるのでしょうか。

グラボ価格押し下げ要因

まず、今後の価格を押し下げる要因としてはRTX4000シリーズの登場があります。
まだ不確定な情報ですが、販売時期は2022年7月頃であるというリーク情報が出回っています。
4000シリーズの描画性能は3000シリーズの倍相当という噂まであり、新モデルが発売になれば当然旧モデルは値を下げることになりますので、今後もこの押し下げ要因は有効に働くことになります。

なおマイニング需要に関して言えば、仮想通貨は2022年に入ってから過去にないほどの値下がりを続けており、電力コスト増と合わせるとすでに、マイニング需要減による価格押し下げは吐き出し尽くしたと考えて良いのではないかと思います。

グラボ価格押し上げ要因

逆に今後の価格を押し上げる要因としては、長引く原油高による輸送/製造コスト増世界的な半導体不足による製造コスト増が挙げられます。

パンデミックは少しづつ収束に向かう気配を見せていますが、ウクライナ侵攻の先行きが不透明な状況が続いており、今後数か月~数年、どの程度の期間をもってこの状況が正常化するかは正直誰にもわかりません。

また、2022年5月現在に問題視されている大幅な円安も、輸入物価の上昇にダイレクトに影響する要因です。

なおこれらは全ての物価に影響する事象であるため、グラボに関わらずPC関連パーツ全体の値上がりに繋がっていくものと考えられます。
事実、これらの影響を受けてここ2年程度で輸入物価指数が大きく上昇していると考えるのが自然です。

販売開始時の定価+20%が妥当な価格?

物価指数をみる限りでは、販売時の定価+20%程度のラインまでは価格が下がる可能性があるかも知れません。
RTX3070 VENTUS 2X OC (LHR)を例にするなら約70,000円+20%で約84,000円。

さらにRTX4000シリーズ販売開始以降にはもう少し下がる可能性もありますが、ただし諸々の状況を加味するといったんは落ち着いたように見えるグラボ価格は今後、PCパーツ全般の値上がりと共に再度上昇傾向に移る可能性が高いのではないかと考えても不自然ではありません。

現時点では定価+20%のラインまで下がったら「買い時」と判断するのが妥当なラインなのではないかと思います。
それでも一時期の価格高騰&在庫枯渇の時期に比べれば、ゲーマーにとってかなりグラボを買いやすい状況になって喜ばしい限りです。

グラフィックボードの価格をチェックする(ドスパラ)